NAPT

ここまでNAT関連で以下のエントリを書きました。

1対1NATではシンプルに2つのIPが相互に変換される動きをみました。シンプルですが、IPアドレスが沢山必要になってしまうという欠点もありました。今回はより「よく使われているNAT」であるNAPTを見ていこうと思います。

ブロードバンドルータ経由で複数のPCがインターネットに同時に接続する

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上記のような環境を考えてみます。家庭内にPCが2台あって、同時にインターネットに出るようなイメージですね。PC1,PC2が同時にWeb Serverに対してWebサイトの閲覧を行おうとしたとします。

WEBサーバーへの通信を開始するので、以下のパケットを生成します。WEBサーバーを想定していますので宛先のポート番号は80番。送信元のポート番号はランダムなポートになりますがここでは1024番にしておきます。

PC1が生成したパケット

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PC2が生成したパケット

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上記パケットがブロードバンドルーターまで届きました。ここでNATが行われます。まず、前回解説した通り宛先IPアドレスは変更されませんし、宛先のポート番号も変更されません(Web Serverの気持ちになってみれば、これは当然です)。送信元IPアドレスはブロードバンドルーターの持っているグローバルアドレスになります(ほかにグローバルIPアドレスはありませんので)。問題はこのときの送信元ポート番号を何番にするか、ということです。どのようにすべきかちょっと考えてみてください。複数のPCが存在していることを考慮してみてくださいね。

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・・・。

・・・。

考えてもらえましたでしょうか。正解は1つではないです。結局送信元のポート番号はランダムに選ばれていますので、基本的には何番でもかまわないからです。ただ、以下のことは考慮しないといけません。

  • 送られてきたパケットと同じ送信元ポート番号を使うことにした場合、他のPCからも同じ送信元ポート番号のパケットが送られてきたときの考慮が必要。(同じ送信元ポート番号を使うと、どちらのPCにひもづいた通信なのかわからなくなってしまう。)
  • ブロードバンドルーターからも通信を開始する可能性があり、そのときの通信とも重複しないようにする必要がある。

通信が混ざる、混ざらないということに関しては、TCPのコネクションの概念を理解していないと理解できないです。このあたりの理解が難しければ、以下のエントリを参照してもらえればと思います。

TCP/IPでは宛先IP、宛先ポート番号、送信元IP、送信元ポート番号の4つの要素の組み合わせで通信を区別します(ソケット)。今考えている環境ではブロードバンドルーター自体と複数のPCが(インターネットへの通信に関して)同じIPアドレスを共有しているのでポート番号でしか区別できなくなっています。なので、ポート番号は(インターネットに出るときには)かならず重複しないようにしなくてはいけないわけです。

このようにポート番号まで書き換えるNATのことをNAPTといいます。

ここまで理解できれば、ブロードバンドルーター上でNATを行ったときに管理表が必須になることがわかると思います。どのパケットをどのように変換すればいいのか、という管理表です。俗にNATテーブルと呼ばれます。

NATテーブルをまで意識しながら通信の流れを見てみましょう。

プライベートIPからグローバルIPへの変換
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グローバルIPからプライベートIPへの変換(戻りパケット)
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どうでしょうか?このようにNATの変換表に、IPとポート番号の情報まで盛り込むことで、1つのグローバルIPのみを用いて複数の端末がプライベートLANからインターネットにまでアクセスできるようになりました。

この際、NATでポート番号まで管理、変換していますのでNAPT(Network Address Port Translation)と呼ばれます。ちなみに、「IPマスカレード」という単語で呼ばれることもありますが、これはLinuxにおけるNAPTの実装の名前が「IPマスカレード」であったために、このように呼ばれるそうです。Linux上の実装は今現在はiptablesに変わっていますので、技術の名称と実装の名称は区別して呼んだ方がよい個人的には思います。

さて、これで一応NAT関連の基礎的な部分は解説を終えたことになります。ここまで理解できればあとはバリエーションの問題ですので、考えれば思いつけるようになると思います。

NATの説明の中ではレイヤ3、レイヤ4にのみ注目しましたが、それぞれレイヤ2レベルでのやり取りも説明できる状態にしておくのが重要だと思います。上記の図にレイヤ2レベルの情報を書き込めるでしょうか?難しければ以下のエントリを再度読んでみてからトライしてみてください。


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